「WordPress の精神的後継」という打ち出しで注目を集めた EmDash(Cloudflare)。管理画面の見た目は WordPress に近い一方で、運用基盤とエコシステムでは別物に近いです。本稿では、比較検討のときに迷子にならないよう、似ている点・違う点・実務上の制約を整理します。
公式の紹介記事: Introducing EmDash — the spiritual successor to WordPress that solves plugin security(Cloudflare Blog)
概要(事実の整理)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発元 | Cloudflare |
| ライセンス | MIT(WordPress のコードは不使用) |
| 種別 | フルスタック CMS(管理画面+公開画面がセット) |
| フロントエンド | Astro 標準搭載 |
| デプロイ先 | Cloudflare Workers / Node.js |
| エディター | TipTap(Notion 風・Markdown 対応) |
| 費用 | Workers Paid(サイト公開に必須)$5/月 + D1・R2・KV(小規模なら無料枠内になりやすい) |
WordPress と似ている点
- 管理画面の UI が WordPress に酷似(左パネル・ダッシュボード・投稿/固定ページの概念)
- カスタム投稿タイプに相当する Content Types
- カスタムフィールド・メディア・コメント・メニュー・ウィジット・カテゴリー・タグ・テーマ・プラグインを標準搭載
WordPress と違う点(EmDash 側の特徴)
- Gutenberg・フルサイト編集はなし
- カスタムフィールドの拡張が標準機能として使いやすい
- SEO・リダイレクト・パーマリンク細設定が標準搭載(WordPress ではプラグイン必須になりがちな領域)
- プラグインはサンドボックスで動作
- ログインにパスキーが必須(パスワードレス設計)
管理画面とコードの役割
管理画面(/_emdash/admin)→ コンテンツ・設定(ノーコード)
コード(src/) → デザイン・レイアウト・表示ロジック
公開側では getEmDashCollection("posts") のような形で管理画面データを取得する想定です。データは管理画面、見た目はコードという分離がはっきりしています。
Cloudflare 前提の強みと制約
デプロイやストレージは Wrangler と D1 / R2 / KV を前提にします。試行では次のような点が現場でつまずきやすいです。
- プロジェクトルートで wrangler / npm を実行する(誤った階層だと
.wrangler/が余計な場所にできる) - R2 の事前有効化が必要な場合がある
- Dynamic Workers 利用により Workers Paid($5/月)が必須な場合がある(無料プランではデプロイ最終段階で失敗しうる)
費用の目安として、Workers は公開に必須になりやすく $5/月程度を固定費として見込むのが無難です。D1・R2・KV は無料枠と従量の組み合わせになります。
現時点の課題(判断材料)
- 管理 UI ラベルが英語ハードコードで日本語化が困難になりやすい
- プラグイン・テーマのエコシステムはまだ小さい
- バージョン依存の不具合報告は追いかける必要がある
実務での扱い(結論)
- WordPress 代替の比較材料として読むのに適している。
- いきなり案件採用より、要件が Cloudflare 前提に収まるかを見たうえでの 検証・試用から入るのが安全。
- 「今の」WordPress(Gutenberg 以降の方向性)とは別カテゴリの選択肢として切り分けると、チーム内の合意形成がしやすいです。
まとめ
- UI が似ているだけで 運用コストや制約は WordPress と別物に近い。
- Cloudflare・英語 UI・有料 Workers を受け入れられるかが採用の分水嶺。
- まずは小さく触り、デプロイと権限まわりまで含めて Go / No-Go を決めるのがよいです。