サーバー移管では、ファイルやデータベースの移し替えだけでなく、「ドメインのレジストラ移管」「ネームサーバーの切り替え(DNSの管理場所の変更)」「Webサイトを新しい環境で公開する」「メールを移す」といった作業が同時に絡むことがほとんどです。
これらはまとめて「移管」と呼ばれがちですが、実際にはそれぞれ別の作業です。ここを混同すると、サイトが表示されない、メールが届かない、承認メールを受け取れない、といったトラブルにつながります。
この記事では、エックスサーバーからさくらインターネットへ移すケースを例に、作業全体を理解するための考え方を整理します。
まず分けて考える
サーバー移管では、少なくとも次の4つを分けて考える必要があります。
- レジストラ移管: ドメインの管理会社を変える
- ネームサーバー切替: DNSをどこで管理するかを変える
- Webサイト移行: サイトの表示先を新しいサーバーへ変える
- メール移行: メールの受信・送信先を新しい環境へ変える
レジストラ移管が完了しても、Webサイトやメールの向き先は自動では変わりません。
たとえばドメイン管理がさくらインターネットに移っても、ネームサーバーが旧環境のままなら、DNSの設定は旧環境側が使われ続けます。逆に、ネームサーバーだけを切り替えて、さくら側に必要なDNSレコードを用意していないと、Webやメールが止まる可能性があります。
レジストラ移管で行うこと
エックスサーバー側で行う作業は、主に次のようなものです。
- 独自ドメイン特典や付帯条件の解除
- ドメインの解約申請
- WHOIS情報の確認・変更
- 認証コード(AuthCode / 認証鍵)の取得
- レジストラロックの解除
その後、さくらインターネット側でドメイン転入申請を行い、認証コードを入力して、転入費用を支払います。
.com ドメインの場合、JPRSなどからレジストラトランスファー承認手続きの案内が届くことがあります。メール内のURLから承認すると、現在の管理レジストラが拒否しない限り、数日以内に移管が完了します。
WHOISメールでつまずきやすい
今回特に重要だったのは、移管承認メールがどこに届くかです。
WHOIS情報が初期設定や代理公開のままだと、承認メールが自分で受け取れない宛先に送られることがあります。その場合、移管申請をしても承認作業ができず、再申請が必要になります。
移管申請前に確認すべきことは次のとおりです。
- WHOIS情報のメールアドレスが受信可能か
- 管理画面上の登録者・管理者メールが受信可能か
- WHOIS情報を変更した場合、反映待ちの時間を取ったか
- 承認メールが迷惑メールに入る可能性を見ているか
「メールアドレスを変更すると一定期間移管できない」という情報を見かけることもありますが、事業者やTLD、時点によって扱いが異なります。実作業では、移管先・移管元の公式案内や問い合わせ回答で確認するのが安全です。
ネームサーバー切替はDNSの管理場所を変える作業
レジストラ移管のあと、ネームサーバーをさくらインターネット側へ切り替える場合、DNSの管理場所もさくら側になります。
このとき選択肢として、旧DNS設定を維持する方法と、DNS設定も同時に切り替える方法があります。
今回のように、最終的にWebもメールもさくらインターネット側へ寄せる方針なら、DNS設定も同時にさくら側へ切り替える前提で準備した方が分かりやすいです。
ただし、新側のゾーンに必要なDNSレコードが揃っていないままネームサーバーだけ先に切り替えると、サイトが表示されなかったりメールが途切れたりするため、この順序は取りません。切替前に、さくら側に必要なDNSレコードを用意しておきます。
切替前に控えるDNSレコード
最低限、次のレコードを確認します。
- A / AAAA: Webサイトの向き先
- MX: メールの受信先
- TXT: SPFなど
- CNAME:
wwwや外部サービス連携など - DKIM / DMARC: メール認証で使っている場合
さくら側のDNS設定に、Webとメールで必要なレコードを作成してから、ネームサーバーをさくら指定のものへ変更します。
切替後は、dig NS、dig A、dig MX などで反映を確認し、ブラウザ表示、SSL、フォーム送信、メール送受信を確認します。
Webサイト移行で見ること
Webサイト側では、次の確認が必要です。
- 新サーバーにWordPressなどの本番環境を用意する
- 本番ドメインで表示できる設定にする
- A / AAAA を新サーバーへ向ける
- SSL証明書を取得・適用する
- WordPressのサイトURLやパーマリンクを確認する
- 問い合わせフォームを実送信で確認する
特にフォーム不具合の解消が目的に含まれる場合、表示確認だけでは不十分です。管理者宛とユーザー宛の両方にメールが届くか、迷惑メールに入らないかまで確認します。
メール移行で見ること
メールもさくらインターネット側へ移すなら、DNSだけでなくメールアカウントの準備も必要です。
- 必要なメールアドレスをさくら側に作成する
- 旧メールボックスのデータを引き継ぐ方法を決める
- MXをさくら側の案内に合わせる
- SPF / DKIM / DMARCを見直す
- 外部からの受信、外部への送信をテストする
メールはDNS反映のタイミングによって、しばらく旧環境と新環境のどちらに届くかが揺れることがあります。切替前後の受信先を把握し、旧環境をすぐに止めないことが重要です。
旧環境は契約終了前に整理する
旧サーバーを解約する場合、契約期間終了後は旧サイト・旧メール・旧DNSまわりを使えなくなる前提で考えます。
そのため、契約終了前に次を済ませておきます。
- 旧サイトのファイルをバックアップする
- データベースをバックアップする
- 旧メールの必要データを退避する
- 現行DNSレコードを控える
- 新環境でWebとメールが動くことを確認する
契約終了後に「旧環境を見に行けば分かる」と考えていると、確認できなくなる可能性があります。
チェックリスト
移管作業では、次のように確認すると抜け漏れを減らせます。
- WHOIS情報のメールアドレスを確認した
- 承認メールを受け取れる状態にした
- 認証コードを取得した
- レジストラロックを解除した
- 移管先で転入申請した
- 転入費用を支払った
- 承認メールから承認した
- 移管完了を管理画面とWHOISで確認した
- さくら側にDNSレコードを用意した
- ネームサーバーをさくら側へ切り替えた
- Web表示・SSL・フォーム送信を確認した
- メール送受信とSPF / DKIM / DMARCを確認した
- 旧サイト・DB・メールをバックアップした
まとめ
エックスサーバーからさくらインターネットへ移す作業では、「ドメイン移管」「ネームサーバー切替」「Web移行」「メール移行」を分けて理解することが大切です。
特につまずきやすいのは、WHOIS情報のメールアドレスと、ネームサーバー切替時のDNSレコードです。
レジストラ移管が完了しても、Webやメールは自動では移りません。さくら側にDNS、Web、メールの受け皿を準備してから、DNS設定も同時に切り替える。これが、旧サーバーを解約する前提では分かりやすく安全な進め方です。